ジャブスから派生したライフスタイルに寄り添うカットソーブランド

21S/Sからスタートしたイタリア発のカットソーブランド「ANTICIPO（アンティーチポ）」。イタリア語で“前進”を意味するANTICIPOというブランド名には、変化し続ける時代に合わせるのではなく、一歩先へと進むための素材やスタイルを提案し、身につけることで気持ちも豊かに楽しくなるブランド、という思いが込められています。クリエイティブディレクターとしてブランドを率いるのは、ミラノ在住でgiabsarchivio（ジャブスアルキヴィオ）を人気ブランドへと押し上げた中新井 淳平氏です。

ANTICIPOのカットソーは、イタリアの中でもカットソーの産地として有名なロンバルディア州にあるカットソー専業ファクトリーを生産背景に熟練の職人によって作られています。デイリーウエアとしてライフスタイルに馴染みの深いカットソー素材を中心にセレクトし、ディテールやフィッティングに変化を加えることにより、カットソーアイテムをアンダーウェアとしてではなくアップウェアとして楽しみながら身につけられるコレクションを提案しています。

時代の空気を映した長袖モックネックカットソー「FIANO LUNGO」

飛ぶ鳥を落とす勢いの人気パンツブランドgiabsarchivio（ジャブスアルキヴィオ）から登場し、瞬く間に市場から姿を消した“ジャブスT”。発売即完売を繰り返すほどの人気ぶりだったことから、翌シーズンの21S/Sに晴れてカットソーブランド「ANTICIPO（アンティーチポ）」として独立しました。当初はクルーネックの半袖と長袖、2型のみの展開でしたが、新ブランドとして独り立ちしたことからラインナップが大幅に拡大されています。

ご紹介するのは、新たにラインナップに加わった「FIANO LUNGO（フィアノ・ルンゴ）」になります。一見なんてことない長袖カットソーかと思いきや、デザイン、素材、シルエット、すべて緻密に計算されており、この一枚に中新井氏のこだわりが詰まっています。私に言わせれば、アンティーチポのカットソーは“革命”です。小さなディテールの変化（進化）を積み重ねることで、従来のカットソーの概念を覆す大きな変化を生んでいます。とにかく見た目がカッコよく、素材や縫製がよく、着心地も最高です。そのうえイタリア製でありながらお手頃価格とくれば、もう買わない理由が見当たりません。もちろん私も個人オーダーを入れました。あまりにも気に入りすぎて、色違い、デザイン違いで6枚も購入してしまいました。以下、アンティーチポのカットソーのどこがそんなにいいのか、もう少し掘り下げてご紹介したいと思います。

「上級者な雰囲気を漂わせるネックデザイン」
FIANOのネックデザインは、このところ人気を集めているモックネックになります。モックネック＝ニットというイメージがありますが、それをカットソー素材で作っているところがミソ。首高をやや低め（約4センチ）に設計し、首が詰まりすぎないようネックの開き具合を計算することにより、首回りをすっきり見せているところも上手いです。

「一枚でも品良く決まる“ちょいユル”シルエット」
アンティーチポのカットソーは、基本的にすべて同じシルエット（フィッティング）を採用しています。採寸数値からもお分かり頂けるように、一般的なカットソーよりも“身幅にゆとりのある作り”になっています。まるで空気をはらんだようなシルエットですが、肩幅がレギュラー設定になっているため、ゆったりしたシルエットにありがちなだらしなさは一切ありません。後述する袖口と裾のリブもだらしなさを解消する大きな役割を担っています。特に大人の男性はゆったりしたシルエットに抵抗がある方も多いと思いますが、アンティーチポのカットソーなら抵抗なく着られると思います。鏡に映った自分の姿を見て、“えっ、俺ってこんなにゆったりしたシルエットが似合うんだ”と驚かれるはず。適度に身体から離れるゆとりのあるシルエットなので視覚的な体型補正効果が期待できます。年齢的に緩んでしまったお腹のたるみがすっきり隠れるので体型が気になりだした方にもお勧めです。

「だらしなさを解消してスマートに見せる袖口＆裾のリブ」
アンティーチポのカットソーには、袖口と裾にリブがデザインされています。ストレッチ素材のリブによって緩い絞りが生まれているので、ゆるゆるの裾出しカットソーとは違って上品なイメージで着こなせます。カットソーはカジュアルなイメージがありますが、リブが付くことでラフさが中和されニットのような上品な姿に変貌を遂げていることをお分かり頂けると思います。上着を羽織ったときに内側で袖や裾がもたつかないのでインナーとして重宝しますし、なにより一枚で着たときに品良く決まります。カットソーにリブを付けるという、まさに目からウロコの神業ディテールだと思います。

「肌触りがよく丈夫で透けにくい60番手単糸コットンスムース」
素材マニアとして知られる中新井氏が手掛けているだけあって、使用されている素材もそんじょそこらのカットソーとは違います。良質な綿花から紡がれた60番手単糸を緻密に編み立てたコットンスムースは、（矛盾した表現ですが）サラッとしているのに肌に吸い付くような滑らかなタッチになります。目が詰まっていて丈夫で型崩れしにくく、程よい厚みがあって透けにくい（白でもほとんど透けない）こともポイントです。この品質でこの価格なら大満足だと思います。

神は細部に宿ると言いますが、アンティーチポのカットソーを観察するとそれを強く実感します。本当によく考えられています。アンティーチポのカットソーを狙っている方にもそうでない方にもお勧めしたい、買って後悔しない一枚です。私が惚れ込んだということもあり、半袖、長袖、ほぼすべてのモデルをラインナップしました。アンティーチポ未経験者はぜひお試しください。実物を手にした方は、きっと二枚目三枚目が欲しくなるはずです。